新年のご挨拶2019(亥)

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あけましておめでとうございます。
旧年中は大変お世話になりました。
本年もよろしくお願いいたします。

今年の年賀状は「あぶり出し」で作りました。
あぶり出しで年賀状を作ったというよりも、「あぶり出しプリンター」を作ったと言ったほうが良いかもしれません(プリンタメーカーの方、共同開発のオファーお待ちしてます)。
最初に年賀状について、そのあと年賀状プリンターについて書いていきます。

まず、年賀状についてです。
「あぶり出し前」「あぶり出し中」「あぶり出し後」の年賀状がこちらです。

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あぶり出し前

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あぶり出し中

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あぶり出し後

まず、火を扱う際にはくれぐれもご注意ください。
私も試作の際にけっこう焦がしました。
できるだけ、弱火にして、端を持ってあぶってください。遠くから徐々に火に近づけていくのが良いです。焦げてしまった際には、焦らずに火から遠ざけてください。絵が浮き上がってきたら少しずつ位置をずらしていくと綺麗にあぶりだされます。

皆さまうまくできましたでしょうか?

今年の年賀状で目指したのは、
①大人にとっても子供にとっても驚きと楽しさがあること
インタラクティブである(何かしてもらうことで完成する)こと
③量産できること
です。いかがでしょうか?反響いただけると嬉しいです。
ちなみに焦がしてしまうとこのような感じになります。

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火の取り扱いにはくれぐれもご注意ください

次にこの年賀状の作り方を書いていきます(自分の忘備録的にも書いているので興味のない方は飛ばして下さい)。

年賀状作りにおいて、量産は必須なので、1枚ずつあぶり出しで絵や文字を描いていくというのはありえませんでした。しかも人の手では精度に限界があるので、完成品の検査体制を整えるのも大変です。そこで、考えたのが「あぶり出しプリンター」です。

まずは、同じようなことを考えて実践している人がいないかを調べてみました。
「ビンゴ!!」

backnumber.dailyportalz.jp

”あぶり出し”+”プリンター”で調べると一発で出てきました。
しかも私が大好きな”デイリーポータルZ”の記事です。
もうこの時点で「完成した!」と感じました。

しかし、、

この記事最後まで読むとこのように書いてあります。
” この記事はエイプリルフール企画のために作ったうその記事です ”

「いや、絶対できるはず!!」

私はこの記者の嘘を真にしました!
作り方の流れはこの記事と一緒です。
インクカートリッジを分解し、インクを入れ替え、そのインクをプリンターにセッティングし印刷する。
細かい部分が(そして重要な部分が)少し異なっているだけです。
まずはプリンターを準備し、カートリッジを分解していきます。
昨年調子がわるくなってプリンターを買い換えました。捨てずに取っておいたプリンターを使います。調子が悪くなったのはカラーのインクの方です。そこで、白黒のインクのカートリッジにあぶり出しの液を入れ替えていきます。

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準備したインクカートリッジ

上ふたの継ぎ目にカッターで切り込みを入れた後、マイナスドライバーを差し込みテコの原理で開けます。簡単に開きます。純正のカートリッジ、リサイクルインクのカートリッジの2種類を試しましたが、若干リサイクルインクの方が楽に開きました。

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インクカートリッジを分解します

次に中のインクを詰め替えます。 スポンジをはずし、中に残っているインクを捨てます。

新品のインクカートリッジでも躊躇せず捨てます
新品のインクでも、捨てます。 躊躇わずに、捨てます。
インク交換ビジネスのカモです。

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インクカートリッジの内部

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新品のインクカートリッジでも躊躇せず捨てます

ここで重要なことが3つあります。
スポンジの選定とあぶり出し液の選定、そして年賀状の選定です。
スポンジはなるべく固くてしっかりとあぶり出し液を保持してくれるものを選びます。
私はこの中から「激落ちくん」を選びました。
しっかりとあぶり出し液を含んでくれ、硬さもあります。

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左が元々のスポンジ、真ん中が洗浄用、右があぶり出し用

あぶり出し液で重要なのは、発色と粘度(おそらく)です。あぶり出し液によってあぶったときに出てくる色が違います。ネットを調べてみると塩化コバルトが良さそうでしたが、簡単に手に入るものではありませんでした。日常生活で手に入れられるもので酸性のもの。そして大量生産に向く成分が一定のもの。私が選んだのはこの2つ。レモン汁とサンポールです。両方試してみると、サンポールの方がしっかりと濃い色が出て色も黒に近いので、はっきりとした絵が表現できます。

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スポンジはピンセットでつまむと外しやすいです

最後に年賀はがきですが、インクジェット用紙を使いましょう。普通紙の方がきちんと液体が浸み込むから良いだろうと想定してみたのですが、両方試してみると、浸み込みすぎて滲みます。また、発色も良くありません。

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スポンジの選定

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あぶり出し液の選定

ここまできたら後はインクを交換したカートリッジをセッティングしなおして印刷するだけです。

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あぶり出し液を入れたカートリッジをセッティング

まずはプリントヘッド調整(笑)
黒のところだけ何も見えないのですが(写真左)あぶると調整画像が出てくるので手順に沿って調整していきます。

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あぶり出されるプリントヘッド調整シート

完成です。あぶっていくと柄がくっきりと出てきたときの感動。子どものころのあぶり出しで拙い文字があぶり出されたときの感動をゆうに超えます。

うその記事でも
”子供の頃、大好きだったあぶり出しが、ここまでの完成度で遊べるようになったとは思ってもいなかったので、正直この結果には大興奮だった。 ”
と書かれていたけど、この部分は本当だった!!
この記事を書いてくれていて本当にありがとう!!

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あぶり出し年賀状完成

しかし!!
そんな喜びも束の間。インクジェット用年賀状を送る枚数準備するために郵便局に行って、帰って来て印刷してみると。。。

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擦れる!!

擦れました。。
構想の当初、予想はしていたのだけど、印刷してみてうまくいっていたから舞い上がっていました。
プリンターの技術、それはプリンターのヘッドとインクのバランス。何年もプロが培ってきたノウハウを、アマチュアが年賀状ごときでしれっと成功できるわけはありませんでした。


この擦れてさらには出なくなった年賀状を送る前に防げたのは良かったのです。
量産で重要なことの一つは工程の中に検査の工程を組み込むこと。一定の枚数ごとに抜き取り検査で自分であぶっていたので早期に発見することができました。
ただ、ここまでたどり着いた時点で12月30日の夜です。
「既成の年賀状を買ってくるか?」
「バカには見えない年賀状を作ったことにするか?」
色々と考えましたが、やはり元技術者として、問題点を叩いて製品化に結びつけることを目指しました。

仮説を立てました。おそらく粘土が高すぎるか、サンポールの中の成分の何かがヘッドを詰まらせているのだと考えられます。
サンポールが悪いのかどうかを切り分けるために、改めて、純正のインク、水、レモン液、そしてサンポールと試します。またインクカートリッジを購入、ますますカモになっていきます。
やはり、サンポールだけが出てきません。
次はサンポールの濃度を変えていきます。実験計画法を思い出しながらパラメータを振っていきます。そいてまたインクカートリッジの購入です。

いやはや。

やはり濃度を低くすると長期間擦れずに出てきます。ただ、薄くしすぎると発色が悪くなります。今回必要な枚数だけ印刷できれば良いので、ちょうど良い塩梅の濃度を探していきます。原液に対して5倍くらいがちょうど良さそうです。

サンポールの裏に書いてありました。
「使用量の目安」
「トイレのタイル→原液を5~6倍に薄めて・・」

そこまで書いてくれるなら、
「トイレのタイル・あぶり出しプリンター」と書いておいてほしかったです。

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発色が悪くなったり

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なかなかあぶり出されなくなったり

失敗を繰り返し、ようやく完成です。

頭の中では中島みゆき地上の星が流れています。
紅白歌合戦は誰が何を歌っているのかわかりません。
必要枚数を摺り終わったときにはすでに元旦。

遅くなってすいません。今から投函します。

それでは本年もよろしくお願いいたします。
皆さまの一層の笑顔と幸多き年になりますことをお祈りしています。

2019年元旦